園長先生

この前、幼稚園にいた頃の園長に偶然会った。会うのは20年ぶりぐらいかもしれない。

ぼくが通っていた幼稚園は仏教系で、教育に力を入れており、割とスパルタ系で地元では有名で人気のある幼稚園だった。園長は元々寺の住職で、幼稚園の横には寺があって、毎朝お御堂に行かされて暑い日も寒い日もお経を読まされていた。そして、この幼稚園は今はもうない。

なくなった理由は、少子化が云々とかよりも少しハードな理由で、園長が逮捕されてしまったからだ。確かぼくが15歳ぐらいの時だったかな。罪状は、飲酒ひき逃げ。おまけに同乗していたのは不倫相手の女性というトリプルパンチだ。幸い被害者を死なせずにすんだようだけど、俗世にまみれすぎである。

当然ながら園の評判は落ち、別荘に行っている間は副園長だった奥さんが園長代理という形でなんとかやっていたらしいけど、園長が出所後、離婚することになり、それを機に園もなくなってしまった。その後も園長は寺の住職はしばらく続けていたみたいだけど、数年前に一度通ったら、そのお寺もなくなっていて売地になっていて、現在は駐車場になっている。

そんなわけで、久しぶりに会った園長はすっかりじいさんになっていて(当たり前だけど)、ぼくの耳にも色々入っているだろうということを気にしてか少しバツの悪そうな顔をしながらも、「元気にしてるかい?」と声をかけてきてくれた。

今はどうか知らないけど、当時(25年ほど前)は一般の幼稚園や保育園で、障害児を受け入れてくれるところというのはなかなかなかった。ウチは両親が少しアレでそれなりに家庭環境が悪かったから、正直どこまで真剣に探したのかはよくわからないけど、やはりそれなりに断られてはいたようで、そんな中で唯一受け入れたのがこの幼稚園だった。

思い返してみると、過去は美化されることを差し引いても、当時としては田舎とは思えないほど先進的なマインドを持った幼稚園だったように思う。

特別扱いはせずに、ぼくに何ができて何ができないかを考えて、しっかり役割をあたえるというのを先生たちがかなり細かく共有してくれていたと思う。また、着替えや歯磨きなど自分の身の回りのことは先生ではなく、同じクラスの子たちがやってくれていた。非常にバランスがよかったと思う。嫌だった思い出というのはほぼない。保護者からは色々と意見もあったかもしれないけど、ああいう形を環境を整えてくれたことはすごく感謝している。

林間合宿では、卒園まで毎年、園長がおぶって登ってくれた。ぼくに色んな話をしながら、みんなと並んで登るという感覚や、山頂付近までいって雲を食べさせてくれて無味ということを教えてくれたのは園長先生だけである。

20年分の近況報告をざっとしたあと、園長は嬉しそうに「そうかそうか。これからも楽しんでね。元気でね。」と言って帰っていった。住職スキルなのかもしれないけど、この過保護でもなく冷たいわけじゃないこの距離の散り方というのがぼくは好きだったことを思い出した。「わたしは少し楽しみすぎたがね。ガッハッハ」的な自虐ネタも少しは期待したけど。さすがに引くけど。

園長はこれからもずっと、奥さんや子どもや被害者からは、クズ扱いをされるのかもしれない。だけど、ぼくにとってはまぎれもなく素敵な園長先生なのである。

改めて人間とはカオスなものだなあと思った、という話でござる。

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『園長先生』へのコメント

  1. 名前:春の七草 投稿日:2014/09/08(月) 20:56:59 ID:ee18b97f7

    とってもいい先生だったんですね。
    仕事に対しての誇りもあったでしょうが、男としての裏の顔もまたあり、運が悪く世間にバレてしまったのでしょう…。
    今もどこかでお坊さんとして頑張っているといいのでしょうか。
    園長先生の人生が今からでも上に向いていきますように。

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